※画像は黒姫童話館をモチーフに、記事内容を含めて生成したイメージ画像です。

割引率に、マイナスをつけた人たちがいた

――黒姫へ行く前に。エンデ、ゲゼル、そして「失われた時間をとりもどす町」


【本記事について】シリーズ10本目です。009では、宮崎県都城市山田町の採掘跡地について「測る前に、何を測るかを宣言する」という事前登録を書きました。今回は、まったく違う土地の話です。長野県信濃町・黒姫高原。 明日から、私はここで開かれるキャンプに参加します。

本稿もまた、行く前に書いています。 009と同じく、現地で何を見るのかを、見る前に宣言しておくためです(キャンプおよび公開講座の情報は童話館の公式サイトに掲載されています。下記出典22)。

そして書きながら気づいたことがあります。この町には、シリーズが追ってきた問いの、ちょうど裏返しが置いてありました。


0. 問題設定:私はずっと、割引率の話をしてきた

第2稿で、私はこう書いた。社会的割引率4%を使うと、100年後の1億円は198万円になる。 150年後なら28万円。彌彦神社の樹齢450年の社叢は、数式の上ではほぼ無価値になる。

第6稿では、それに物理からの裏づけを与えた。割引率を選ぶのは倫理だが、割り引かれる時間Tを決めるのは物理である。 Tは交渉できない。

第7稿では、認知の壁を扱った。82年は職業人生から対数で0.31桁しか離れていない。 だから長すぎると感じられない。

——ここまで、私はずっと「将来を割り引く」という一方向の話をしてきた。

割引率を下げること以外に、長期の資産を守る方法はないのか。

その問いに、まったく別の角度から答えを出そうとした人たちがいた。そして、その人物の資料の9割が、これから私が行く町にある。


1.【国語×経済】時間貯蓄銀行は、複利の装置である

ミヒャエル・エンデ(1929-1995)の『モモ』は1973年に発表され、翌1974年にドイツ児童文学賞を受賞した。

物語の中心にあるのは**「時間貯蓄銀行」である。灰色の男たちは人々に、時間を節約して預ければ利子をつけて返すと説く。松岡正剛の読解によれば、銀行員は「時間をあずけてくれたら5年で同額を利子として払う」**と言い、時間の節約の仕方を説明してまわる(下記出典1)。

別の要約では、灰色の男は床屋のフージーに**「毎日、時間を貯蓄せよ」「利子で人生は10倍以上に伸びる」**と迫る(下記出典2)。

[筆者試算]この利率を計算してみる。

「5年で同額を利子として払う」=5年で2倍。複利で年利を逆算すると——

年利 約14.9%

(筆者試算。2^(1/5)−1 = 0.1487)

経過年数元本の倍率
20年16倍
30年64倍
40年256倍

「10倍以上に伸びる」という灰色の男の説明は、この利率なら誇張ではない。 20年で16倍になる。物語の設定は、複利計算として整合している。

[ただし、重要な留保があります] これは約束された利率です。実現した利率ではありません。 その意味は2-2節で扱います。

[筆者の整理]そして、この物語の本当の主題は時間ではない。

複数の読解が同じ結論に到達している。ある考察は、灰色の男たちが葉巻なしでは生きられず葉巻の煙で時間に毒を入れるという設定を挙げ、煙=毒を利子に読み替えると設定がしっくりくると述べる。そして、『モモ』の主要テーマは「お金」、特に「利子」についての問題提起であり、「時間」はそれに付随する副次的なテーマだと結論している(下記出典3)。

横浜市立大学の市民講座の講義録も、『モモ』の中で時間貯蓄銀行の灰色の男たちは人の時間を盗み、不労所得や投資などの利潤を生み出していると整理し、エンデは現代が抱える資本主義経済システムの根源的欠陥を「お金」を根源的に問い直すことで気づかせようとしたとしている(下記出典4)。


2.【数学】割引率と減価率を、同じ数直線に置く

ここからが本稿の核心である。

エンデが問題視した「利子」の逆側に、彼が注目した思想家がいた。**シルビオ・ゲゼル(1862-1930)**である。

NHKが1999年5月4日に放送し、書籍化された『エンデの遺言――根源からお金を問うこと』は、エンデが最後に望んでいたのは利子が利子を生まない貨幣だったとし、**「老化するお金」「時とともに減価するお金」**という概念を紹介した(下記出典5、下記出典6)。

Wikipedia「自由貨幣」の整理によれば、ゲゼルの提案はスタンプ貨幣——一定期間ごとに額面の一定割合のスタンプを購入して貼ることを強制する仕組み——であり、1930年代にオーストリアのヴェルグルなどで実際に流通した。そしてケインズは『雇用・利子および貨幣の一般理論』で、スタンプ付き貨幣の背景をなす考えは健全なものであると一定の評価を与えつつ、流動性打歩をめぐる批判も加えている(下記出典7)。

[筆者の分析]ここで、シリーズの議論と接続する。ただし先に、用語の整理をしておく。

[重要な区別]ゲゼルが提案したのは「割引率」の変更ではない。

経済学の用語では、社会的割引率は将来の便益を現在価値に換算するための率であり、規範的な評価の道具である。一方ゲゼルが提案したのは、貨幣を保有し続けることのリターン(名目の保有利回り)をマイナスにするという、実際の資産の性質そのものへの介入である。両者は別の概念であり、混同してはいけない。

[では、なぜ本稿はこの二つを並べるのか]

両者が実物資産に与えるインセンティブの構造が、数学的には同じ指数関数の裏表になるからである。

そして両者は、標準的な理論では**ハードルレート(投資が採算に乗るために超えるべき収益率)**を介してつながっている。貨幣を持つことの利回りが下がれば、実物投資が超えるべき水準も下がる。採算に乗る投資の時間軸が伸びる。 ゲゼルの主張の中核は、そこにあった。

[そのうえで、数式としては次のように対比できる]

割引率 r:将来の1円の現在価値 = (1+r)^(−t)
減価率 d:現在の1円の将来価値 = (1−d)^t

[筆者試算]r = d = 4% のとき、両者はほぼ同じ曲線を描く。

経過割引 (1.04)^(−t)減価 (0.96)^t
10年0.67560.6648
50年0.14070.1299
100年0.01980.0169

(筆者試算)

曲線は同じである。だが、意味は正反対だ。

割引率減価率
何を小さくするか将来の便益現在の貨幣
誰に不利か未来世代いま貨幣を退蔵する人
直接の作用長期の便益が評価から消える退蔵が罰される(=流通が加速する)
長期資産への影響持つ理由が消える持つ理由が生まれうる(※後述の留保あり)

3行目の「退蔵」という語が、ここから先の鍵になります。

[筆者試算]貨幣が減価する世界では、森を「持ち続ける」ことが相対的に有利になる。

前提を明示します。 ヴェルグルの史実どおり**毎月1%の減価(月次複利)**とします。すなわち、貨幣1円を t 年間そのまま持ち続けたときの残存価値は (1−0.01)^(12t) です。

年換算すると (0.99)^12 = 0.8864、つまり年約11.4%の減価にあたります。「毎月1%」を単純に12倍した年12%ではありません。 ここは検算できるよう明記しておきます。

森の実質価値が一定と仮定した場合、**何もせずに持ち続けたときの残存価値の比(森/現金)**は次のようになります。

経過森/現金計算
1年後1.13倍1 ÷ 0.99¹²
5年後1.83倍1 ÷ 0.99⁶⁰
10年後3.34倍1 ÷ 0.99¹²⁰
30年後37.27倍1 ÷ 0.99³⁶⁰

(筆者試算。月次複利。森の実質価値を一定と置いた粗い比較であり、森林資産の収益性・管理コスト・流動性の差は考慮していません。「価値」ではなく「保有し続けたときの残存の比」として読んでください)


2-2.【国語×経済】ここで、『モモ』の主題と噛み合う——「退蔵」という軸

ここまで数式の話をしてきましたが、エンデがなぜゲゼルに惹かれたのかは、数式だけでは説明できません。

両者を並べる軸は「退蔵(ためこむこと)」です。

[筆者の整理]そして、並べてみると三つの立場が出てきます。二つではありません。

現在をどう扱うか将来をどう扱うか長期資産(森)への帰結
① 高い割引率(現行の費用便益分析)現在を重く見る将来を軽く見るいま伐って現金化する
② 時間貯蓄銀行(『モモ』)現在を犠牲にせよ将来を(偽って)重く見せる——(時間が対象)
③ 減価する貨幣(ゲゼル)退蔵を罰する相対的に将来が軽くならない実物に換える理由が生まれる

①と②は、正反対の病です。

第2稿以来、私が批判してきたのはでした。割引率4%は将来をほぼゼロと評価する。将来が軽すぎる。

ところがエンデが描いたのは、その逆です。 灰色の男たちは「利子で人生は10倍以上に伸びる」と説き、床屋のフージーは仕事の無駄口をやめ、好きな人と会う頻度を減らし、母親を養老院に入れた(下記出典2)。将来のために現在を差し出させる。将来が重すぎる。

[筆者の読解/F4]そして、その将来は来ません。

横浜市立大学の講義録が整理するとおり、灰色の男たちは人の時間を盗み、不労所得や投資などの利潤を生み出している(下記出典4)。松岡正剛の記述によれば、住人たちは時間が倍になって戻ってくることに狂喜する(下記出典1)——狂喜するのは、戻ってきたからではなく、戻ってくるという約束にです。

私の読むかぎり、預けた時間が利子つきで返ってきた場面は、物語に現れません。 第1章で私が逆算した「年利14.9%」は、約束された利率であって、実現した利率ではない。

[筆者の分析]この三つを並べると、ゲゼルの位置が見えます。

  • ①の病は「将来が軽すぎる」——ハードルレートが高すぎて、長期投資が採算に乗らない
  • ②の病は「将来が重すぎる」——複利の約束が、現在を食う

そして③は、両方に効きます。 貨幣の保有利回りを下げれば①のハードルレートが下がり、退蔵が罰されれば②の「ためこむ動機」そのものが消える。

エンデが惹かれた理由は、おそらくここにあります。 彼が敵視したのは高い金利ではなく、利子が利子を生む仕組みが、いまこの瞬間を担保に取ることでした。だから答えは「利子を下げる」ではなく、**「ためこめない貨幣をつくる」**になる。

[筆者の見立て]シリーズの言葉で言い直すと、こうなります。

割引率は「将来をいくらに見積もるか」の話であり、退蔵は「現在をどう扱うか」の話である。
長期資産を守るには、両方を同時に見なければならない。



2-2.【国語×経済】『モモ』と、ちょうど裏返る

ここで、第1章に戻ります。エンデがゲゼルに惹かれた理由が、この「退蔵」という一語で説明できます。

灰色の男たちが人々に迫ったのは、退蔵でした。 むだなおしゃべりをやめ、客ひとりにかける時間を減らし、年老いた母と過ごす時間を半分にする。そうやって浮かせた時間を、使わずに預けよ——これが彼らの勧誘です(下記出典1、下記出典2)。

ゲゼルの減価する貨幣は、その正反対を強制します。 持ち続ければ減る。だから退蔵できない。

時間貯蓄銀行減価する貨幣
何を勧めるかためこめためこむな
手段利子(正のリターン)スタンプ(負のリターン)
結果として増えるもの貯蓄流通

エンデが問題にしたのは「利子」だと、複数の読解が指摘していました(下記出典3、下記出典4)。その裏返しとして、「利子が利子を生まない貨幣」を望んだ(下記出典5、下記出典6)。両者は同じ一つのことの表と裏です。

2-3. ただし、物語のほうには仕掛けがある

——と、ここまで書いて、正確を期すために付け加えなければならないことがあります。

『モモ』の時間貯蓄銀行は、実は利子を払っていません。

灰色の男たちは人間から盗んだ「時間の花」を冷凍して貯蔵庫に保管し、葉巻に加工して吸うことにより存在している(下記出典23)。ある読解は、灰色の男たちが葉巻なしでは生きられず、葉巻の煙で時間に毒を入れるという設定を、煙=利子と読み替えるとしっくりくると述べ、利子は架空のお金だから、利子分を返済するためには他人が持っている既存のお金を奪わなければならないと分析しています(下記出典3)。

つまり、時間貯蓄銀行は高金利の貯蓄機関ではありません。詐欺です。

[筆者の整理]この区別は、比喩を精密にするうえで重要です。

  • 勧誘のレベルでは、灰色の男は「退蔵せよ」と言う(=ゲゼルの正反対)
  • 仕組みのレベルでは、預けたものは返らない(=そもそも貯蓄ですらない)

エンデが描いたのは「高すぎる金利」ではなく、「裏づけのない自己増殖」でした。 ゲゼルの減価する貨幣は、自己増殖する側の符号を反転させることでそれを止めようとした設計です。

2-4. そして決定的な違いは、「見えるかどうか」

ここに、第7稿と直結する論点があります。

松岡正剛の整理によれば、ヴェルグルのスタンプ紙券は12カ月分の枡目が印刷されていて、そこに使用者たちがスタンプを貼るようになっている。そして**使用者の「痕跡が残る紙幣」**でもあった(下記出典6)。

[筆者の分析]減価は、紙の上で目に見えます。

時間貯蓄銀行スタンプ貨幣
価値の変化減っている(実際には盗まれている)減っている
それが見えるか見えない(誰も気づかない)見える(枡目が12個、印刷されている)

第7稿で私はこう書きました。実感できない数は意思決定に入らない。入らない数は、存在しないのと同じである。

スタンプ貨幣は、減価を可視化する装置でした。 数字を紙の上の12個の枡目に翻訳する。第7稿で挙げた「①分母を人間サイズに落とす」「④対数目盛で並べる」と同じ工夫を、1932年の町長がやっていたことになります。

逆に『モモ』の恐ろしさは、減っていることが誰にも見えないところにあります。 灰色の男たちは存在を知られてはならないとされていました(下記出典24)。

物語では、時間が減っていることが隠されていた。 ヴェルグルでは、貨幣が減っていることが印刷されていた。

同じ「減価」でも、可視性がまったく違う。 そしてシリーズの立場からすると、後者だけが意思決定に入ります。


2-5. そして、この推論には正面からの反論がある

ケインズの批判が、まさにここに当たります。

Wikipedia「自由貨幣」が引く『一般理論』の記述によれば、ケインズはスタンプ付き貨幣の背景をなす考えは健全なものであると評価しつつ、こう指摘した。もしスタンプ制度によって政府紙幣から流動性打歩が取り去られるとしたなら、一連の代用手段——銀行貨幣、要求払いの債務、外国貨幣、宝石、貴金属一般など——が相次いでそれにとって代わるであろう(下記出典7)。

[筆者の整理]ケインズが挙げた代替物を見てください。

ケインズが挙げた逃避先流動性
銀行貨幣、要求払いの債務高い
外国貨幣高い
宝石、貴金属中〜高
極めて低い

貨幣から逃げた資金がまず向かうのは、森ではありません。 もっと流動的な何かです。

つまり「減価する貨幣は森の保有を有利にする」という私の推論は、ケインズの想定では成立しにくい。 数式の上での比は成り立っても、実際の資金は、より流動的な代替物へ先に流れるからです。

[F5:検証されていない]そして、ヴェルグルの13か月では、これは検証されていません。 短期の消費と納税が加速したことは記録に残っていますが、非流動的な長期資産への資金移動が起きたかどうかのデータを、私は見つけられませんでした。

[筆者の見立て]だとすれば、正しい書き方はこうなります。

貨幣を減価させると、長期の実物資産を持つ理由が理論上は生まれる。
ただし、その資金がどこまで流動性の低い資産まで届くかは、実証されていない。

割引率を下げることは、長期資産を守る唯一の方法ではありません。 貨幣の側の保有利回りを下げても、ハードルレートを介して同じ方向に効きうる。符号が逆で、作用点が逆で、しかし向いている側は同じです。

ただし、前節で書いたとおり、その効果が森のような非流動的資産まで届くかは別問題です。

第6稿で私は「割引率を選ぶのは倫理である」と書きました。本稿で加えるならこうなります。

割引率を「下げる」以外に、貨幣そのものを「腐らせる」という手がある。
ただし、腐らせた貨幣から逃げた資金が、森まで届く保証はない。


3.【歴史×経済】ヴェルグル——13か月で終わった実験

その手は、一度だけ実行された。

[事実関係の整理と、出典間の食い違い]

オーストリア・チロル地方の町ヴェルグルで、1932年から1933年にかけて**「労働証明書」**という地域通貨が発行された。町長ミヒャエル・ウンターグッゲンベルガーがゲゼルの理論を実践したものである。月初に額面の1%にあたるスタンプを貼らないと使えない仕組みで、1年持ち続ければ12%減価した(下記出典8、下記出典9、下記出典10)。

ただし、細かい数値は資料によって食い違う。 008で確立した作法に従い、そのまま並べる。

項目資料による記述の幅
当時の人口4,216人/4,300人/5,000人足らず
失業者数350人/400人/500人
発行の担保「町役場の手許のシリング」/「町長が貯蓄銀行から借入れた32,000シリング」

[F2〜F3]どの数字も二次資料であり、原資料には当たれていません。 本稿では**「人口4千〜5千人規模の町で、数百人が失業していた」**という水準で扱います。

結果については、複数の資料が共通して次を伝えている。発行後わずか数日で、1,000シリングしか発行していないのに5,100シリングもの税収が入った(下記出典9、下記出典11)。労働証明書の流通回数は週8回に達し、当時のオーストリア・シリングの10倍を超えた(下記出典12)。ヴェルグルは世界恐慌後に完全雇用を果たした初めての自治体となったとも言われる(下記出典12)。

そして終わり方が重要である。

1933年9月、オーストリアの中央銀行によって禁止された(下記出典11)。松岡正剛の整理によれば、オーストリア政府と中央銀行は紙幣の発行は国家の独占的な権利であるとして、ウンターグッゲンベルガー町長を国家反逆罪で起訴し、すべての新紙幣を回収した(下記出典6)。

[筆者試算]実験の期間は、1932年7月末から1933年9月まで。およそ13か月である。

[筆者の分析]シリーズの文脈で読むと、これは第6稿・第9稿の議論の反復になる。

第9稿で私は、採石法における廃止業者の責任期間が2年であることを指摘し、「制度の時間軸には桁が足りない」と書いた。

ヴェルグルは、その逆の意味で桁が足りなかった。 13か月では、この仕組みが長期資産(森や建物)の保有インセンティブをどう変えるかを検証できない。成功も失敗も、証明されていない。

[F5:本稿の限界]「ヴェルグルの奇跡」として流通している記述の大半は、当時の報道と後世の紹介に基づいています。 対照群を置いた検証ではありません。私はこれを「実証された成功例」としては扱いません。


4.【地理】なぜ、エンデ資料の9割が信濃町にあるのか

さて、黒姫である。

黒姫童話館は、長野県上水内郡信濃町の黒姫高原にある町立の文学館で、信州児童文学会の協力によって1991年(平成3年)に開館した。エンデの2,000点を超える作品資料を本人寄贈により収蔵し、世界で唯一常設展示している施設である(下記出典13)。

なぜ信濃町なのか。 童話館自身の説明によれば、そこにはゆかりが何もなかった。

同館の記録によれば、展示構想の段階で文芸評論家の山室静から「最近の作家ではエンデは欠かせない」という助言を受けたのがきっかけだった。折しも東京で「エンデ父子展」が開催されており、監修者の子安美知子(早稲田大学教授)の仲介で来日中のエンデに会う機会を得る。「たとえ数点でも資料をいただきたい」という願いに対して、エンデの口から出た言葉は——

「私の手持ちの資料でよかったら、全部提供しましょう。今後新たに生まれる資料についても毎年定期的に補充しましょう」

以来、草稿・ノート・手紙・愛用品・コレクションが信濃町へ送られ続け、1995年にエンデが他界した後も夫人から遺愛品が送られ、届いた資料は2,000点にのぼった(下記出典14)。

童話館関係者の回想によれば、エンデ資料はドイツにも数か所収められているが、全体の9割近くは黒姫に収められており、生誕から亡くなるまでの資料があるところは世界随一である(下記出典15)。

[筆者の整理]この経緯そのものが、シリーズの主題と重なる。

第4稿で私は、下北沢の緑地について「決定は三者協議で、設計は専門家で、管理は住民法人で」と書いた。エンデ資料の場合、所有していた人(エンデ)と、保管する人(信濃町)と、整理する人(研究者たち)が、完全に分かれている。

しかも生前エンデは**「この資料は研究者だけでなく、できるだけ多くの人たちが活用できるようにしてほしい」**と語り、その意志に従って開館以来、資料の整理と目録づくりが7年かけて行われた(下記出典14)。

「使ってもらう資源として渡す」——これは、私が009の第10章で自分の森について書いた方針そのものです。 半世紀近く前に、同じことをした人がいた。


5.【化学×地理】そして同じ町が、「失われた時間をとりもどす町」を掲げている

ここで、本稿を書いていて最も驚いたことを書きます。

信濃町のもうひとつの看板は、こうです。

信州・信濃町 “癒しの森” ~失われた時間をとりもどす町~(下記出典16)

——『モモ』の副題は「時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」である(下記出典17)。

同じ町が、物語と行政の両方で、同じ一つのことを言っている。

そしてこちらは、まったく別の系譜から来ている。

信濃町は2003年から「癒しの森事業」に取り組み、平成17年(2005年)夏、森林セラピー実行委員会による生理実験調査を経て、第一期森林セラピー基地に認定された(下記出典18、下記出典19)。林野庁の事例集によれば、約250haの森林内に「癒しの森コース」が設定され、町独自の養成講座と町長による認定制度のもとで「森林メディカルトレーナー」が約140名認定されている。「癒しの森の宿」として認定された宿は35軒にのぼる(下記出典20)。

[筆者の分析]この町には、時間をめぐる二つの装置が、独立に存在している。

黒姫童話館癒しの森
開始1991年開館2003年事業開始/2005年認定
系譜児童文学・経済思想森林医学・産官学連携
「時間」の扱い物語として問う生理指標として測る
主体町立の文学館町+民間+医療+研究

互いに直接の関係はないように見える。 だが、両方が「失われた時間」という同じ言葉を使っている。


6.【化学】森林セラピーは、何を測っているのか

では、森林セラピーは何を測っているのか。ここが本稿の理科側の中心です。

信濃町の説明によれば、森林セラピー基地とはリラックス効果が森林医学の面から専門家に実証され、関連施設においても優れていると認定された地域であり、「整備された森林環境」と、検証に基づく「生理・心理的効果」がともに認められる場合に認定を受けることができる(下記出典19)。

そして実際の測定結果として、健康保険組合の解説ページが二つの調査を紹介している(下記出典21)。

[調査1] 信濃町は本間請子医師と協力し、首都圏に住む61名に体調や年齢に応じて距離や高低差の異なる3コース(黒姫高原、野尻湖畔)を歩いてもらい、森林浴前後の血液データを比較した。 解析結果は自律神経機能が安定するといわれる数値にいずれも近づいていた

[調査2] 都市に勤務する女性看護師13名が2泊3日で森林セラピー基地へのツアーを行った結果、森林浴後、血液中のナチュラル・キラー(NK)細胞の数および抗ガンタンパク質の増加によってNK細胞の活性が増加し、さらに持続効果が認められた。

[F判定:F2]これらは健康保険組合のウェブページを通じた紹介であり、私は原著論文にあたっていません。 008で確立した作法に従い、「原論文未確認」であることを明記します。 現地で、原著と実験プロトコルの所在を確認するのが第一の課題です。

[化学]なぜ森が生理に効きうるのか。

主要な仮説のひとつがフィトンチッド——樹木が放出する揮発性の有機化合物、主にテルペン類——である。信濃町の解説にも、樹から日中舞い上がったフィトンチッドが、夜には降り注いでくるという記述がある(下記出典21)。

[筆者の整理]構造としてはこうなります。

  1. 針葉樹・広葉樹がモノテルペン・セスキテルペンなどの揮発性有機化合物を放出する
  2. それらは本来、他個体との競合、食害への防御、微生物への抑制などの機能を持つとされる
  3. 人がそれを吸入する
  4. 生理指標(NK細胞活性、コルチゾール、血圧、心拍変動)に変化が出る

[重要な留保]2から4への因果は、まだ確定していません。

森の中では、揮発性物質のほかに、光環境・音環境・湿度・気温・歩行という運動・日常からの離脱が同時に変化します。「テルペンが効いた」と言うには、これらを分離した実験が要ります。

私は、現地でこの分離がどこまでなされているかを確認しに行きます。


7.【方法論】同じ森に、二つの物差しが当たっている

ここで、009と本稿がつながります。

009で、私は採掘跡地の回復をSERの回復ホイールで測ると宣言しました。 6つの主要属性——脅威の不在、物理条件、種組成、構造の多様性、生態系機能、外部との交換——に1〜5の星をつける方式です。

信濃町の森林セラピーは、同じ森を、まったく違う物差しで測っています。

[筆者の整理]二つの物差しの対比

SER回復ホイール森林セラピー基地認定
測る対象生態系の側人間の側
指標種組成、構造、機能NK細胞活性、自律神経、心理尺度
参照点参照生態系(隣の森)都市環境/被験者自身の前後差
認定主体(国際標準。認定制度ではない)森林セラピー研究会(産官学)
何のために測るか回復したかを判定する効くかを判定する

この対比は、第5稿で作った星取表そのものの構造です。

理系6分野×文系6分野という枠組みは、同じ対象に対して複数の物差しを当てるための道具でした。信濃町では、その実例が、制度として並存している。

[筆者の見立て]そして、どちらか一方では足りません。

  • 生態系だけ測ると、「誰にとっての価値か」が抜ける
  • 人間だけ測ると、「その森が持続するか」が抜ける

森林セラピーの生理指標は、極端に言えば、人工林でも都市公園でも出るかもしれません。 逆にSERの回復ホイールは、人が一度も訪れない森でも満点になりえます。

同じ森に二つの物差しを当てて、初めて「守る理由」が両側から立つ。


8. リアル理科社会塾の本拠地へ持ち帰れるもの、持ち帰れないもの

009で扱ったリアル理科社会塾の本拠地、宮崎県都城市山田町のボラ土採掘跡地に繋げます。

[持ち帰れるかもしれないこと] 跡地の再生を評価するとき、SERの生態指標に加えて、人の側の指標を測るという選択肢がある。

[しかし、正直に書きます。持ち帰れない可能性のほうが高い。]

森林セラピーの生理効果が確認されているのは、成熟した森です。信濃町の癒しの森は250haの整備された里山林であり、樹高も林床も、数十年から百年単位の蓄積があります。

採掘跡地の若い植生に、同じ効果があるという根拠を、私は持っていません。

[F5:検証課題] 若い再生植生における生理指標の変化は、私の知るかぎり十分に検証されていません。「跡地でも森林セラピーができる」と書くのは、現時点では希望的観測です。

[筆者の提案]だとすれば、正しい問いはこうなります。

回復の途中段階で、人の側の指標はどう変化するのか。

これは、まだ誰も測っていない可能性がある。 009で「回復債務」——回復途上では機能が3〜5割欠損したまま推移する——という概念を紹介しました。人の側にも回復債務の曲線があるのか。 あるとすれば、それは生態指標と同じ形をしているのか、違う形か。

現地で確認したうえで、これを次の事前登録の候補として置いておきます。


9.【事前登録】黒姫で、何を見るか

009と同じ作法で、行く前に宣言しておきます。

9-1. 事実確認項目(=調べれば決まること。仮説ではない)

#確認すること方法
1エンデ資料2,000点のうち、貨幣・経済思想に関する資料は何点あるか童話館の資料リスト・常設展示の確認
2エンデがゲゼルをどこで知ったか、一次資料に痕跡はあるか蔵書・書簡・ノートの展示確認
3森林セラピー基地認定時の生理実験の原著と実験プロトコルの所在癒しの森事務局への照会
4癒しの森250haの林相(人工林か天然林か、樹種、林齢)現地観察および事務局への照会
5森林メディカルトレーナー約140名の現在の稼働数と収入構造事務局への照会
6「失われた時間をとりもどす町」という標語の成立経緯——童話館との関係はあるか町・事務局への照会

6番が、本稿を書きながら最も気になっている点です。 偶然の一致なのか、意識的な接続なのか。現時点では分かりません。

9-2. 条件分岐(事実に応じてルートが変わる。成否ではない)

[分岐A:エンデとゲゼルの一次資料]

  • 蔵書・書簡に痕跡がある → エンデの経済思想を一次資料から辿る回を書く
  • 痕跡がない、または非公開 → 『エンデの遺言』という二次資料の成立過程そのものを扱う

[分岐B:森林セラピーの検証水準]

  • 原著と実験プロトコルにアクセスできる → 生理指標の測定手法を、跡地評価に転用できるか検討する
  • アクセスできない → 「認定制度が何を根拠にしているか」を制度の側から検討する

9-3. 反証可能な仮説

[仮説1]「失われた時間をとりもどす町」という標語は、黒姫童話館のエンデ受け入れとは独立に成立している。

  • 反証条件: 標語の策定過程に童話館・エンデが関与していたことが確認された場合。その場合、この町は「物語が行政の言葉になった」稀な事例になります。

[仮説2]癒しの森250haの主要部分は、天然林ではなく人工林または二次林である。

  • 反証条件: 主要部分が原生的な天然林であった場合。その場合、009の「参照生態系」の議論に直接つながります。

[仮説3]森林セラピーの生理指標は、若い再生植生では検証されていない。

  • 反証条件: 若齢林・再生地での検証研究が存在した場合。その場合、山田町の跡地に直接適用できる可能性が出てきます。

[付記]009では、外部からの指摘を受けて「前提の不成立」と「仮説の反証」を混同していたことを修正しました。 本稿では最初からこの三分類で書いています。指摘は、次の記事の書き方を変えます。


10.【授業設計】理科×社会の教材化メモ

[数学]複利と減価を、同じグラフに描かせる

  • 年利14.9%(時間貯蓄銀行)、割引率4%、減価率(ヴェルグルの毎月1%=年約11.4%)の3本を、同じ片対数グラフに描かせる
  • 「毎月1%」を年に直すときに12%としてはいけない理由((0.99)¹² = 0.8864)を検算させる
  • 問い:「この3本のうち、100年後の森を守るのはどれか」
  • 狙い:符号を変えると帰結が変わることの体感。本稿で最も教材価値が高い

[国語×経済]『モモ』の利率を逆算させる

  • 「5年で同額を利子として払う」から年利を計算させる(2^(1/5)−1)
  • 「人生が10倍に伸びる」が何年で達成されるかを計算させる
  • 問い:「灰色の男は嘘をついているか」
  • 狙い:物語の設定が数学的に整合していることの発見。文学と数学の接続

[国語×経済]三つの立場を表にさせる

  • ①高い割引率 ②時間貯蓄銀行 ③減価する貨幣 を、「現在をどう扱うか/将来をどう扱うか」の2列で分類させる
  • 問い:「①と②は、同じ病か、逆の病か」
  • そのうえで『モモ』で利子が実際に支払われる場面があるかを本文で探させる
  • 狙い:物語の中の約束と実現を区別する読み。文学の精読が経済の議論になる

[国語×経済]「ためこめ」と「ためこむな」を並べさせる

  • 灰色の男の勧誘文句と、スタンプ貨幣の仕組みを並べ、何が正反対かを書かせる
  • そのうえで問う:「時間貯蓄銀行は、預けた時間を返しているか」
  • 狙い:勧誘のレベルと仕組みのレベルを区別する訓練。比喩を精密に扱う練習になる

[情報・統計]減価を「見える」ようにする設計

  • スタンプ貨幣の12個の枡目を実際に描かせ、毎月1つ貼るシミュレーションをさせる
  • 問い:「同じ減価でも、見えるのと見えないのとで、行動はどう変わるか」
  • 狙い:可視化そのものが制度設計の一部であることの理解

[社会×歴史]ヴェルグルの数字の食い違いを並べさせる

  • 人口・失業者数について、資料ごとに異なる数字を表にさせる
  • 問い:「どの数字を採るべきか。採れないときはどう書くか」
  • 狙い:008で確立した出典の作法の演習

[化学]揮発性物質と生理反応の因果を分解させる

  • 「森の中で血圧が下がった」という結果から、考えられる原因を列挙させる(テルペン/運動/音/光/日常からの離脱)
  • 問い:「テルペンが効いたと言うには、どんな実験が必要か」
  • 狙い:交絡因子という概念の獲得

[情報・統計]同じ対象に二つの物差しを当てる

  • 校庭の樹木を、①生態指標(種数・樹高・被覆率)②人の指標(そこで過ごした後の気分・脈拍)の両方で測らせる
  • 問い:「二つの結果が食い違ったら、どちらを信じるか」
  • 狙い:星取表の構造そのものの体験

[発展・探究]自分の町の標語の出所を調べる

  • 自治体のキャッチコピーを一つ選び、いつ誰がどう決めたかを調べさせる
  • 狙い:言葉の成立過程を辿る訓練

11. 結論:符号を変えるという選択肢

本稿の主張を4行にまとめます。

第一に、『モモ』の時間貯蓄銀行は、複利の装置である。 「5年で同額の利子」から逆算すると年利約14.9%。20年で16倍。物語の設定は、複利計算として整合している。 そして複数の読解が示すとおり、主題は時間ではなく利子である。

第二に、割引率と減価率は別の概念だが、「退蔵」という一点で正反対に働く。 灰色の男は「ためこめ」と迫り、ゲゼルの貨幣は「ためこむな」と強制する。そして決定的な違いは可視性にある。物語では時間が減ることが隠され、ヴェルグルでは貨幣が減ることが紙に印刷されていた。

あわせて、実物資産へのインセンティブという一点で、両者は同じ指数関数の裏表になる。 割引率は将来の便益を小さくし、減価率は現在の貨幣を小さくする。前者は森を伐る方向に、後者は森を持つ方向に働く。 ただしケインズが指摘したとおり、貨幣から逃げた資金がまず向かうのは流動性の高い代替物であり、森のような非流動的資産まで届くかは実証されていない。

第二の補足として、割引率と退蔵は別の軸である。 私が第2稿以来批判してきたのは「将来が軽すぎる」という病だったが、エンデが描いたのは「将来が重すぎて現在が食われる」という逆の病だった。そして『モモ』では、約束された利子は一度も支払われない。 ゲゼルの減価する貨幣は、この両方に同時に効く設計になっている。

第三に、その実験は13か月しか続かなかった。 ヴェルグルは1932年7月末から1933年9月まで。中央銀行が禁止した。成功も失敗も、証明されていない。

第四に、そのエンデの資料の9割が置かれている町が、同時に「失われた時間をとりもどす町」を掲げる森林セラピーの先進地である。 そしてそこでは、同じ森に生態系の物差しと人間の生理の物差しが別々に当たっている。


シリーズ10本を書いてきて、自分がやっていることの形が、少し見えてきました。

私はずっと、一つの物差ししかない場所に、二つ目の物差しを持ち込もうとしています。

明治政府の計算式に、生態系サービスという項目を(002)。割引率という経済の物差しに、回復時間という物理の物差しを(006)。面積という指標に、周長密度という指標を(004・005)。そして採掘跡地に、参照生態系という基準点を(009)。

本稿で分かったのは、その作業を、すでに制度としてやっている町があるということでした。

黒姫童話館は、物語という物差しを持っています。癒しの森は、生理という物差しを持っています。そして両方が、同じ「失われた時間」という言葉を使っている。

偶然かもしれません。確かめに行きます。

そして、もし偶然でないとしたら——物語が行政の言葉になり、行政が科学の言葉を借りて、森を守っているということになります。それは、私がリアル理科社会塾の本拠地・山田町でやろうとしていることの、ひとつの完成形かもしれません。

次回、その報告を書きます。宣言と照らし合わせて、外れていたら外れていたと書きます。


出典一覧

A. 本文で根拠として使用した資料

[エンデ『モモ』の読解]

  1. 松岡正剛『千夜千冊』1377夜『モモ』ミヒャエル・エンデ(時間貯蓄銀行の勧誘、「5年で同額を利子として払う」) https://1000ya.isis.ne.jp/1377.html
  2. 「【人事部長の教養100冊】『モモ』ミヒャエル・エンデ あらすじ&解説」(床屋フージーへの勧誘、「利子で人生は10倍以上に伸びる」) https://jinjibuchou.com/momo
  3. ブックアカデミア「モモ:あらすじ・感想・考察 ミヒャエル・エンデ」(葉巻=利子という読み替え、主題は「お金」「利子」であるという解釈) https://book-academia.com/world/eu/germany/michael-ende/momo/
  4. 横浜市立大学学術情報センター市民講座『地域通貨の可能性』第一回 講義録(平成14年11月7日。エンデの経済批判とゲゼル、ヴェルグルの整理) http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~center/kouza/no1.pdf

[エンデとゲゼル、減価する貨幣]

  1. 河邑厚徳+グループ現代『エンデの遺言――根源からお金を問うこと』NHK出版(1999年放送のNHK番組の書籍化。「老化するお金」「時とともに減価するお金」) https://www.amazon.co.jp/dp/4140804963
  2. 松岡正剛『千夜千冊』1378夜『エンデの遺言』(1999年5月4日放送、エイジング・マネー、ヴェルグルの経緯と国家反逆罪での起訴) https://1000ya.isis.ne.jp/1378.html
  3. Wikipedia「自由貨幣」(ゲゼルのスタンプ貨幣の仕組み、ヴェルグルとシュヴァーネンキルヒェン、ケインズによる評価と批判) https://ja.wikipedia.org/wiki/自由貨幣

[ヴェルグルの実験]

  1. 廣田裕之『シルビオ・ゲゼル入門 減価する貨幣とは何か』の紹介(1932〜33年、額面の100分の1のスタンプ、1・5・10シリングの3額面) https://note.com/tanahashi/n/n9f7a8328e243
  2. 「成功する政府貨幣:ヴェルグルから学ぶ」(1932年7月末の発行、月ごとに額面1/100のスタンプ、導入3日後に5,100シリングの税収) https://demurrageja.wordpress.com/2009/02/08/成功する政府貨幣-ヴェルグルから学ぶ/
  3. 「オーストリアで地域経済を復活させた地域通貨」(1932年春の人口4,216人・失業350人、1933年9月の中止) https://mig76jp.wordpress.com/2006/05/09/オーストリアで地域経済を復活させた地域通貨/
  4. 廣田裕之「減価する貨幣の理論」集広舎(1932年7月31日の発行、失業者数25%減、1933年9月に中央銀行が禁止) https://shukousha.com/column/hirota/2478/
  5. セミナー情報ドットコム「地域通貨の魅力とは?ヴェルグルの奇跡に学ぶその存在意義」(流通回数が週8回、シリングの10倍超、完全雇用) https://www.seminarjyoho.com/article/setsuyaku/5809

[黒姫童話館とエンデ資料]

  1. Wikipedia「黒姫童話館」(信濃町立、1991年開館、2,000点超の作品資料を本人寄贈により収蔵、世界で唯一常設展示) https://ja.wikipedia.org/wiki/黒姫童話館
  2. 黒姫童話館&童話の森ギャラリー「M・エンデの童話館所蔵資料リスト/資料の公開にあたって」(山室静の助言、子安美知子の仲介、エンデの申し出、2,000点、7年をかけた目録づくり、「多くの人たちが活用できるように」) https://douwakan.com/dowakan/ende_about/datalist
  3. 「黒姫童話館から『ミヒャエル・エンデの世界』」(エンデ資料の9割近くが黒姫にあり、生誕から死去までの資料がある点で世界随一) http://carrot.starfree.jp/2019/038.html
  4. 信州信濃町 癒しの森® 公式サイト(「信州・信濃町 “癒しの森” ~失われた時間をとりもどす町~」) http://iyashinomori.main.jp/
  5. 黒姫童話館&童話の森ギャラリー 施設案内(喫茶室「時間どろぼう」、『モモ』の副題の引用) https://www.shinano-machi.com/spot/501

[森林セラピー]

  1. 信濃町「癒しの森」(平成17年に林野庁から「森林セラピー基地」の指定) https://www.town.shinano.lg.jp/docs/1156.html
  2. 信州信濃町 癒しの森®「森林セラピー基地とは」(認定要件、平成17年夏の生理実験調査を経て第一期認定) http://iyashinomori.main.jp/foresttherapy/base/
  3. 里山なび(林野庁 森林総合利用推進事業)「森林の癒しの効果を事業化」(約250haの癒しの森コース、森林メディカルトレーナー約140名、癒しの森の宿35軒) http://nousanson.jp/satoyama/example/jirei12
  4. 名古屋木材健康保険組合「長野県信濃町 癒しの森」(本間請子医師との調査:首都圏61名・3コース・血液データ/看護師13名の2泊3日でNK細胞数と活性の増加と持続効果/フィトンチッドの記述) https://mokuzai-kenpo.or.jp/health_index/forest_therapy/foresttherapy

[黒姫童話館の現行イベント]

  1. 黒姫童話館&童話の森ギャラリー 公式サイト(エンデキャンプ2026および公開講座の告知) https://douwakan.com/
  2. Wikipedia「モモ (児童文学)」(灰色の男たちは人間から盗んだ「時間の花」を冷凍して貯蔵し、葉巻に加工して吸うことにより存在する) https://ja.wikipedia.org/wiki/モモ_(児童文学)
  3. note「【かんがえてみよう】『灰色の男たち』とはだれなのか?」(『モモ』岩波少年文庫からの引用を通じ、灰色の男たちが存在を知られてはならないとされる点を紹介) https://note.com/binmiya_/n/ne5bd3726918a

B. 本シリーズ既刊(各記事の詳細な出典は当該記事末尾を参照)

  1. リアル理科社会001:サステナビリティは南方熊楠に学ぼう
  2. リアル理科社会002:明治政府は計算していた。ただし、項目が足りなかった
  3. リアル理科社会003:100年前に知事の判断で神社合祀を免れた新潟の今
  4. リアル理科社会004:下北沢:明治神宮でも、鎮守の森でもない、緑地の”第三の型”
  5. リアル理科社会005:理系と文系の掛け算を36マスで表現してみた
  6. リアル理科社会006:割引率を選ぶのは倫理、割り引かれる時間を決めるのは物理
  7. リアル理科社会007:82年と70兆円は、なぜ実感できないか~理科と社会を繋ぐ数学と国語~
  8. リアル理科社会008:「調べる」から「判断する」へ。AI時代の知のつくり方
  9. リアル理科社会009:宮崎県都城市山田町:採掘跡地に、誰が森を戻すのか――測りに行く前に、測ることを宣言する

C. さらに読むなら

  • ミヒャエル・エンデ『モモ』大島かおり訳、岩波少年文庫
  • 河邑厚徳+グループ現代『エンデの遺言――根源からお金を問うこと』NHK出版
  • シルビオ・ゲゼル『自然的経済秩序』ぱる出版
  • J.M.ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』(第23章にゲゼル評)
  • 李卿『森林医学』ほか森林医学関連の総説

本記事は、筆者がこれから参加する黒姫でのキャンプに先立って執筆した事前登録であり、訪問記録ではありません。本文中の記述は、上記の公開情報にもとづき筆者が要約・再構成したものです。引用元の文章をそのまま転載することは避け、内容は筆者の言葉で記述しています。

「筆者試算」「筆者の整理」「筆者の分析」「筆者の見立て」「筆者の提案」と明記した数値・表はすべて筆者独自のものです。とくに以下にご注意ください。(1)『モモ』の時間貯蓄銀行の「年利14.9%」は、二次資料が伝える作中の記述から筆者が逆算した値であり、原作に明記された数値ではありません。(2)「森/現金」の試算は、ヴェルグルの史実である毎月1%の減価を月次複利で計算したものであり(年換算で約11.4%)、「年12%」の単純計算とは一致しません。森の実質価値を一定と置いた粗い比較であり、森林資産の収益性・管理コスト・流動性の差は考慮していません。また第2章に記したとおり、減価する貨幣から逃げた資金が非流動的な長期資産まで届くかは実証されていません。(3)ヴェルグルの人口・失業者数・担保の性質については資料間で記述に幅があり、本稿は幅のまま提示しています。いずれも二次資料であり、原資料には当たれていません。

*『モモ』において「預けた時間が利子つきで返ってきた場面は現れない」という記述(第2章2-2節)は、**筆者の読解(F4)*であり、原作の全文を網羅的に検証したものではありません。作中の「年利14.9%」も、二次資料が伝える作中の記述から筆者が逆算した、約束された利率です。

森林セラピーの生理実験(出典21)については、健康保険組合のウェブページを通じた紹介であり、筆者は原著論文および実験プロトコルを確認していません。本稿では出典を明示したうえで「F2(信頼できる二次資料で確認)」として扱っており、断定的な効果の主張としては読まないでください。また、揮発性有機化合物(フィトンチッド)と生理指標の変化の因果関係は、光・音・湿度・運動・日常からの離脱といった交絡因子と分離された形では確立していません。